塩崎研究室では、主に生物化学および分子生物学的手法を用いて、生体内分子の機能解析やその応用に関する研究を行っています。研究は魚類などの水生動物が中心ですが、哺乳類やバクテリアなども研究対象としており、研究室の研究テーマは多岐に渡っています。我々はこれら生物のDNAやタンパク質をターゲットに、培養細胞や実験動物などを用いた実験を行っています。

 

 生体内に存在する様々な分子のうち、我々は特に複合糖質に特に着目し、研究を進めています。複合糖質とは、糖鎖がタンパク質や脂質などに結合した分子の総称であり、様々な生物現象に関与することが分ってきました。たとえばヒトでは、複合糖質が発生や免疫機能を制御すること、またがんや糖尿病などの悪性化に複合糖質の構造や組成が関与していることが、だんだん明らかになってきています。

 しかしその一方で、魚類など水圏生物における複合糖質や関連酵素の働きについてはよくわかっていません。そこで本研究室では、水圏生物における複合糖質の機能を明らかにし、その応用をめざすことを目的として研究を行っています。

 

 水圏生物と哺乳類における糖鎖の機能を比較することで、ある糖鎖分子の機能が生物全般に共通するものなのか、もしくは水圏生物独自なのかを明らかにすることができます。もし、ある水圏生物の糖鎖分子の働きがヒトなどと共通したものであれば、ヒトの発生や疾病などの研究モデルとしての応用することが可能になると考えています。また、糖鎖分子の働きが水圏生物独自のものである場合、その生物特有の現象に関与していることが予想できます。複合糖質は神経分化や細胞増殖、成熟や発生などに関与していることが哺乳類などの研究で明らかなことから、水圏生物における糖鎖研究の成果は養殖業を中心とした水産業への応用に繋げることができます。

 そこで本研究室では小型魚類を用いて、複合糖質およびその関連酵素に関する研究を行っています。研究に小型魚類を用いる理由としては、1)飼育が容易である、2)卵が透明なため、非破壊で連続的な発生を観察できる、3)ゲノム解析が進んでおり、様々な疾病モデルが入手可能である、4)遺伝子改変が容易であることなどが挙げられます。そこでメダカやゼブラフィッシュはヒト研究のモデル動物として注目を浴びていますが、その一方で複合糖質に関する研究はほとんどありません。また小型魚類はヒト研究のモデル動物としてだけでなく、他の魚類のモデルとしても研究に利用することが出来ます。このことは飼育が難しい大型魚や遺伝子情報が少ない魚類などへの応用が可能であると考えられます。

 さらに本研究室では、複合糖質および関連酵素の機能を介した健康機能性に関する研究も行っています。糖鎖の構造変化は、種々の疾病の悪性化を制御しているとされていることから、その構造変化を制御することで疾病の治療に結びつけることが出来ると考えられます。複合糖質の構造変化は糖鎖合成酵素および分解酵素が行っているため、これら酵素の活性成魚が非常に重要となります。また、複合糖質自身も疾病を改善する薬のシーズ化合物となる可能性を秘めています。

 鹿児島県は南北に600kmにおよぶ長さであり、そこには多様な生物環境が存在します。水棲生物の種類も多種多様であり、未利用資源も数多く存在します。すなわち、我々が知らない成分を持つ生物がいる可能性も大いにあります。本研究室では、それら未利用資源から上記のような機能を有する天然物を探索し、その物質の特定を行うと共に、詳細な作用機序についても生物学的観点から明らかにすることを行っています。

 本研究室は個人研究室ですが、研究の遂行に当たっては食品生命科学分野、および水産学部内や他学部、他大学との共同研究室も行っています。興味のある方は、ぜひ研究室に遊びに来てください。お待ちしております。